コラム「凡言録」より4月22日
東・関大震災−4−22
いわき市役所久之浜・大久支所は市民で混雑していた。「何ですか」と職員に聞いた。「東電への補償申請です」。政府が原発事故で「屋内退避」を指示した久之浜・大久地区は、全世帯が補償の対象だという
▼1世帯あたり100万円、1人暮らしは75万円。当面の生活費を早く手渡すための仮払いだという。東電が用意した用紙に、住民票を添えて申し込む。東電の社員が2人きていて、その場で受け付けた。市民は黙々と申請を書いていた
▼原発事故は市民の日常を狂わせ、安寧の日々を奪った。恐怖と不安に陥れた。家に閉じこもり、外には出るな。出るときは帽子だ、マスクだ、手袋だ。肌をさらすな。帰宅したら衣服についた放射能をはたき落とせ、落とした衣服は脱いでビニールのゴミ袋に入れて密封しろ
▼多くの市民が市内の小学校や高校の体育館に避難した。入りきれなくて、校庭に車を停めて寝た人もいた。親戚、知人を頼って遠くに避難した人もいた。非日常は市民を苦しめた。いま思う。日常のありがたさを。(4月22日)