コラム「凡言録」より8月5日
絆(きずな)
3月11日の大震災を機に、人と人の結びつきを大切にしようという思いが強くなったようだ。住友生命保険が「日本の未来を強くする漢字一文字」をアンケート募集したら、「絆」がダントツの1位、2位の「愛」、3位の「信」を大きく引き離した▼
大災害に遭った日本人は、「こんどの巨大地震においても、被災地の方々の表情の一つひとつがじつに穏やかで、静かだった…子どもも、大人たちも、高齢者も病床に臥す方々も、ほとんど例外がない」と、宗教学者の山折哲雄さんは書いている(『絆』)▼
海外で発生した大災害では被災地の人が泣き叫び、怒りをあらわにぶつける姿がしだいにクローズアップされていく。アメリカのハリケーンの被害、スマトラ島沖の大地震と大津波、トルコや中国における大地震…。あまりに際立つ対照性は、いったい何に由来するか▼
山折さんは「日本人はいわば地震列島人として五千年、一万年のあいだ、地震という不安定な自然の脅威、災害と付き合いつづけてきたからではないか」と考える。(8月5日)