■ 大田高校科学部化学班 ■



「思いで自転車旅行」のページにも高校時代の化学部(科学部化学班)の一部を記載しています。

島根県立大田高等学校科学部化学班の特別ページ
{三瓶山周辺鉱泉総合研究}大田高校科学部化学班
--島根県立大田高等学校創立40周年記念録(昭和36年10月)より--
表紙絵は、春日為義先生の作品です。


松ヶ平鉱泉で検察中の木村次雄君







毎日新聞の昭和36年12月25日付けで、五段写真入にて下記の内容にて紹介がありましたので全文紹介致します。
学園から出版二つ 大田高記念録、大森小詩集
学園から出版された話題の本二つー。


<>創立四十年を祝う県立大田高校の”記念録”(活版二百ページ)が二十三日発刊になった。春日為義教諭執筆の表紙絵、旧職員や卒業生の思い出では元校長志岐実翁氏の土井晩翠、山田耕作氏に依頼した校歌制定(昭和四年)学制改革(同二十三年)松田育英会誕生(同二十五年)など追想は郷土史的に興味深い。このほか記念論集では、斎藤義心教諭の”出雲石見万葉地史”科学部の”三瓶山周辺鉱泉総合研究”などが目にひく。豪華なこの記念録はやがて何年か先には貴重な教育資料として珍重される時が来るだろう。


<>大田市大森小学校六年生の詩集”しもばしら”が二学期の終わりを記念して刊行した。同市内小学校では、先生たちの詩集運動が活発になり、これはその中の特異な詩集。大森町は、かって石見銀山の町として栄えたところ、担任の高尾富三先生はさびれて行くこの町の子供にたくましい詩感をもたせ、無気力になりがちな町の環境の中に生きる力を注ごうという野心を燃やし、昨年から学期ごとに詩集を出している。
”しもばしら”は十五ページの本だがぴりりとひきしまった四十人の子らの詩が乗っている。



大田高校創立40周年記念のクラブの沿革と現状から科学部化学班の記事を紹介します。
次に化学班について説明していこう。
現在化学班員は25名である。研究で目立つものは、三瓶山周辺の鉱泉総合研究ぐらいである。一昨年から始めて今年で3年目の測定を終え、結果の整理におわれている現状である。
化学班の五、六年前の研究資料はほとんど残されていない。でも先輩の残してくれた研究に、
昭和三十三年度
1) 石鹸の洗浄作用
2) 炎色反応
3) 硝酸の製法
4) イオンの反応
5) 炭酸ガス
6) 爆鳴氣 
7) 黄燐
8) ケミカルガーデン
三十四年度
1) 三瓶山周辺鉱泉総合研究(T)
2) 石灰石から炭酸カルシユウ―ムまで
3) ケミカルガーデン
4) 反応速度の測定
5) 電解質溶液の電気伝導度
6) 触媒反応の実験
7) 電気メッキ
三十五年度 
1) 三瓶山周辺鉱泉総合研究(U)
2) (久手の)海岸からの距離に於ける塩素イオンの変化
3) ベークライト製法
4) 銅アンモニア人絹の製法
5) アンモニアソーダ法の原理で炭酸ナトリウムの製作
6) 電解質の濃度と電気伝導度の関係
7) アゾハ色素の製法
8) 尿素樹脂の製法
9) ケミカルガーデン
以上のようなものが現在はっきりしている。新しいものと言えば、昨年から原子化学の分野の研究も行ない始め、基礎的な器具の製作を行なっている。
化学班の発展していくであろう将来について述べると部門別研究(例えば、無機化学、分析化学、有機化学各部門、電気化学部門、原子化学部門等)
一年生基礎理論実験を六月中に行ない、それ以降は各部門別に研究、又深く研究するものとして、ペーパークロマイトグラフィー、ポーラログラフィー、香料、顔料、染料の合成など・・・・それから地学の方も研究する予定である。
以上各班の概況を述べたが、科学部で一番の悩みは、一年生、あるいは新入部員の科学活動に支障をあたえないだけの基礎的な理論や実験が中学校で行なわれていない事である。その為積極的に研究が行なわれない。
なお来年度より物理班、化学班は、物理部、化学部になる予定である。
補追(2001.8.25)アンダーライン部分
昭和三十四年十月科学部として矢上高校へ高文連発表を見聞生代表一名行く。
昭和三十五年十一月浜田高校に於いて化学班の三瓶山周辺鉱泉総合研究を発表す。
大田高校創立40周年記念文化祭より化学班に関するところのみ御紹介致します。
科学部展化学部門展
 1 三瓶山周辺鉱泉総合研究第三回調査結果の発表(詳細研究論文編参照)
 2 尿素樹脂の製造
PHの違いによって製造中の状態及び製品の性質を調べる。
 3 分子量の測定
理論値と実験値にどれ程の誤差があるかを調べる為に酸素と炭酸ガスについて実験する。
 4 化学発光
 (1)塩素ガスを発生させ過酸化水素水と水酸化ナトリウムの混合液に通じると赤色に発光する。過酸化水素水と水酸化ナトリウム液の濃度によって発光する度合いも違う。
 (2)ピロガロール〔C63(OH)3〕 に過酸化水素水を加え、その上に過マンガン酸カリを加えると発光する。発光は薬品の入れる順序で変わってくる。
63(OH)3+H2O2+KMnO4=発光する
63(OH)3+KMnO4 =発光する
H2O2
63(OH)3+KMnO4+H2O2=発光しない
KMnO4+C63(OH)3+H2O2=発光しない
63(OH)3+H2O2=発光しない
尚C63(OH)3・H2O2・KMnO4は同量ずつ入れた。
 5 ケミカルガーデンの理論究明と製法成長測定における研究
 6)酢酸の性質
 7)結晶の製法と発展
 8)油脂抽出
 9)尿素樹脂の製法
10)ウイルソンの霧箱 (霧を発生させ放射線を肉眼で見る箱)

大田高校化学部の歴史は、大正九年気象観測に始まる。昭和二十三年の気象の資料あり、昭和三十六年当時、科学部は物理班・化学班・気象観測班から成り立っていた。気象観測は、毎日行ない、定期的に松江気象台へ報告を行なっていた。今日のような、気象衛星が在るわけではなく、気象データとして貴重と言える。継続と忍耐・友達の和を学んだと言える。


追記・・・十数年前、大田高校化学部が部員が少なくなり、生物部と合同し新しい部が出来たと風の便りで聞いた。新たに部活動のお役に立てればとの思いも込めて書いたものである。尚、大田高校創立40周年記念記念録には、生物部の研究論文も掲載されている。
                          2008.6.追記 渡辺