コラム「凡言録」より7月5日

家畜を弔う鐘

福島第一原発から20`圏内の家畜について、政府は飼い主の同意を得て殺処分するよう指示した。対象の家畜は牛約3500頭、豚約3万頭だったが、同意した飼い主は315戸のうち94戸だけ。処分されたのは牛50頭、豚900頭だ▼
隠れて餌を運ぶ飼い主もいたというが、多くは餓死した。日本獣医師会など「福島生物資源放射能調査団」が先月下旬、警戒区域の富岡町に入り、悲惨な光景を見た。約400頭の豚がほとんど餓死し、1頭だけ犬のようにやせ細っていた。水をやると10g以上を休まず飲んだ▼
西条八十は寝藁の上で死んだ黒牛を悼んで歌っている。「女やもめのご主人に/いつも仕えた忠義者/くろはすなおな牛でした/お寺の鐘は鳴りません/けれども花は散ってます」(「村の英雄」)。金子みすゞに影響を与えたという▼
政府は殺処分した家畜の埋葬を認めず、筋弛緩剤で死なせた後、消石灰を撤きブルーシートで覆うだけだった。お寺の鐘を鳴らしたい。畜産農家の要望を受け、政府は埋葬の検討を始めた。(7月5日)


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