コラム「凡言録」より7月8日
水産復興特区
岩手県漁連会長の大井誠治さんは大震災で三つの涙を流した。一つは大津波で漁業・漁村が壊減的被害を受けた悲しみの涙。二つは多くの人から励ましを受けた感動の涙。三つは被災地に不安と混乱を招く行動への憤りの涙だ。緊急全国漁業代表者集会で発言した▼
三つ目の憤りとは、政府の大震災復興構想会議(五百旗頭真議長)が「復興への提言」に盛り込んだ「水産業復興特区」構想だ。村井宮城県知事が提唱した。水産復興の名目で養殖をはじめ沿岸漁業に、民間企業を自由に参入させるのが狙いだ▼
漁業法は実際に地元の海で働いている漁業者を組合員とする漁協に優先的に漁業権を与えており、それで組合員が漁業を営むことができる。それを「構想」は資本規模の大きい企業に優先的に漁業権を与えるようにしようというのだ▼
狭い沿岸漁場で持続的に資源を確保するため、漁協は漁期、漁法、漁獲量などルールを決め、漁民はそれを守って操業している。そこに民間企業の野放図な漁業を参入させれば、沿岸漁業は壊れる。(7月8日)