コラム「凡言録」より9月9日

 屋形船

いわきの浜は嘆いている。海が放射能に汚染されて漁ができない。浜に住んでいて地魚が食えないストレスを解消しようと、東京・品川の岸から屋形船に乗った。浜風に吹かれて残暑をしのぐ趣向だが、船はガラス張りでエアコンが備わっていた▼

4つのグループ、30人足らずの客の乗合船で、江戸前の魚を食べる。「江戸前」とは「江戸の前に位置する海」で、魚介類が豊富なところ。一時は工場排水などで汚れたが、どっこい江戸前は生きている。ウナギの蒲焼、てんぷら、にぎり寿司、佃煮、浅草海苔は江戸前の海が生んだ五大食文化だ▼

舟盛りで出た刺し身はマグロ、カンパチ、甘エビ、イカ、帆立貝などで、江戸前の魚は乏しい。イワシ、アジ、コハダなどの小魚の味は楽しめなかった▼

てんぷらは良かった。御台場沖に錨を下ろし、船内で揚げたキス、アナゴ、イカ、芝エビなどが客の皿に載り、天つゆと岩塩で食べる。アサリご飯が旨かった。昔は「てんぷら船」があり、客が食べきれないてんぷらは客のお持ち帰りにした。(9月9日)


コラム9月10日へ進む。

コラムトップへ戻る


携帯対応−震災報告トップへ進む


携帯対応草木庵トップへ戻る