コラム−12月18日
「事故収束」か
野田首相は16日、東電福島第一原発について、「原子炉は冷温停止状態に達し、事故そのものは収束に至ったと判断される」と、事故収束を宣言した。福島原発は溶けた燃料の状態がわからず、汚染水は増え続け、放射性物質の放出もとまっていないのに、収束とは何ごとか▼
原発の冷温停止とは本来、原子炉に制御棒牟入れて核分裂を抑え、水を循環させて冷却し、原子炉が100度未満に安定している状態だ。福島原発は津波で全電源を失い原子炉の冷却が不能になった。炉内には溶けた燃料棒があり、冷却は応急の水循環によっていて、汚染水は溜まり海にも流出した▼
政府は事故収束に向けた工程表の「ステップ2」で冷温停止状態の目標時期を来年1月としていたが、9月になって年内に前倒しした。野田首相は国連の原子力安全に関する首脳会議で「冷温停止状態を年内に達成すべく」と国際公約している。予定通りの収束宣言ではないか▼
政府の政治的な収束宣言を、福島県民は冷やかに受けとめており、誰も喜んでいない。(12月18日)