コラム−20125月14日
青葉若葉
雪がほとんど降らない、いわきの冬山を「山眠る」といえば、表現が強すぎる。そのいわきの山も緑が濃くなって、輝きが増してきた。青葉若葉が美しい頃になった▼
松尾芭蕉が江戸・深川を発って「おくのほそ道」の旅に出たのは元禄2年(1689年)旧3月27日。陽暦でいうと5月15日にあたる。「月日は百代の過客にして、行きかふ年も又旅人也」と。4日後には日光を訪ね、「たゆたふと青葉若葉の日の光」と詠んでいる▼
句意は山本健吉によると、「何と尊く感じられることか。この日光山の青葉若葉に輝く日の光は」となる。日光の山は昔、二荒山書いたのを、空海大師が開基したとき、日光と改められた。芭蕉は「憚り多くて筆をさし置きぬ」と遠慮がちに書いている▼
最も好きな芭蕉作品は。現役俳優の投票によるランキングがある。柳川彰治編『松尾芭蕉この一句』介され、「あらたふと青葉若葉の日の光」は39位。なかなかの人気だ。因みに1位は「荒海や佐渡によこたふ天の川」だった。(5月14日)